~正しく知って頂き、人と野鳥の適正な関わりによる共存を目指して~
2010年10月14日に、北海道稚内市大沼でカモの糞便から高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)が検出されて以来、以下のとおり、国内のニワトリや野鳥で高病原性鳥インフルエンザの発生が続いております。
- 10月14日、北海道稚内市大沼で回収されたカモの糞便から、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)検出(10月26日確定・発表)
- 11月29日、島根県安来市でニワトリの高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)感染死(12月2日確認・発表)
- 12月19日、富山県高岡市古城公園動物園で飼育されていたコブハクチョウの死体から高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)感染確認・発表(16日死亡、17日感染疑い発表)
- 12月18日、鳥取県米子市安倍で保護された衰弱コハクチョウから高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)感染確認・発表(4日衰弱、5日死亡)
- 12月21日、鹿児島県出水市で衰弱して保護あるいは死亡して回収されたナベヅル6羽のうち4羽から高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)感染確認・発表(18日保護、20日死亡)、1月12日までに計6羽で感染確認
- 12月23日、鹿児島県出水市で衰弱して保護されたマナヅル(21日保護、23日死亡)簡易検査陽性反応(感染疑い)、28日にも同陽性反応(計2羽)
- 1月19~21日公表 福島県郡山市で発見されたキンクロハジロ2羽(4日及び5日に死亡個体回収、19日にH5N1亜型が判明)、1羽(10日死亡個体回収。簡易検査陰性だが、遺伝子検査は陽性)、1羽(7日に死亡個体回収。簡易検査陰性だが、遺伝子検査は陽性)
- 1月22日公表 21日発生 宮崎県宮崎市佐土原町 養鶏場(宮崎県養鶏場1例目)
- 1月22日、23日、2月1日公表 北海道の国指定厚岸・別寒辺牛・霧多布鳥獣保護区 ①オオハクチョウ1羽(19日回収)②オオハクチョウ1羽(12日回収、簡易検査陰性)、③オオハクチョウ1羽(18日回収、簡易検査陰性)、④カモ(スズガモ属)1羽(17日回収、簡易検査陰性)、⑤オナガガモ1羽(19日回収、簡易検査陰性)、⑥オオハクチョウ1羽(28日収容)
- 1月23日公表 宮崎県児湯郡新富町 養鶏場(宮崎県養鶏場2例目)
- 1月25日公表 島根県松江市の国指定宍道湖鳥獣保護区 キンクロハジロ1羽(14日に死亡個体回収)
- 1月26日公表 25日発生 鹿児島県出水市高尾野町養鶏場
- 1月26日公表 高知県仁淀川町 オシドリ(25日衰弱個体回収)
- 1月27日公表 26日発生 愛知県豊橋市大岩町養鶏場
- 1月27日公表 長野県小諸市 コガモ1羽(死亡個体)簡易検査陽性(HPAI疑似症例)
- 1月27日公表 1月26日発生 宮崎県都農町 養鶏場(宮崎県養鶏場3例目)
- 1月28日公表 兵庫県伊丹市(瑞ヶ池)①ホシハジロ1羽(12日に死亡個体回収、簡易検査陰性だが、遺伝子検査陽性)②カイツブリ(25日に死亡個体回収、簡易検査陽性)
- 1月28日公表 宮崎県児湯郡川南町大字川南 養鶏場(宮崎県養鶏場4例目)
- 1月29日公表 宮崎県延岡市北川町川内名 養鶏場(宮崎県養鶏場5例目)
- 1月31日公表 宮崎県児湯郡高鍋町 養鶏場(宮崎県養鶏場6例目)
- 2月1日公表 宮崎市高岡町 養鶏場(宮崎県養鶏場7例目)
補足:韓国と香港での発生状況
- 12月7日、益山(イクサン)市で11月29日に捕獲されたマガモから高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)感染確認・発表
- 12月10日、瑞山(ソサン)市で11月26日と29日に回収されたワシミミズク死体2羽から高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)感染確認・発表
- 12月18日、香港でニワトリの高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)感染死
- 12月28日、南海郡(ナムヘグン)で12月22日に発見されたトモエガモ死体74羽のうち20羽から試料採取し、1羽から高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)検出
一般の方から野鳥にふれる機会のある方々向けに、現在得られている情報・知見等を以下のとおりまとめました。
これを参考として、高病原性鳥インフルエンザウイルスが人に感染する可能性が低いことを理解していただき、弱っているまたは死亡している野鳥を発見した場合や自宅で飼っている鳥が死んでしまった場合の対処方法などについて、正しい知識を身につけていただくようお願いいたします。
野鳥などの野生動物、人や車両が高病原性鳥インフルエンザウイルスを運んで感染を広げてしまう可能性があります。その感染拡大を防止するため、野鳥など野生動物への餌付けによる過密化※と発生現場への安易な接近、現場の取材などを避けて頂くようお願いします。また、発生していない農場においても、感染症の発生を防ぐため、家禽のいる農場へは不用意に立ち入らないようお願いします。立ち入る必要のある際には農場関係者の指示に従って必要な防疫措置をとってください(※鹿児島県出水市における高病原性鳥インフルエンザの発生後、ツルへの給餌が継続されている理由は、給餌の中止により、逆にツルを分散させて感染を拡大させてしまうことが心配されているためです)。
以下に述べますとおり、これまでに野鳥からヒトに感染した事例は報告されておらず、距離感を保って野鳥を観察することは全く問題がありませんし、過度に恐れる必要はありません。野生動物とうまく共存していくためにも、冷静な対応にご理解頂くようよろしくお願いいたします。
1. 鳥インフルエンザについて
鳥インフルエンザは、鳥類の感染症で、鳥インフルエンザウイルスは、昔から北方圏のツンドラ地帯でカモなどの水鳥と共生してきており、これらの鳥が感染しても、まず病気を起こさない関係にあります。しかし、このウイルスが「養鶏場」など高密度で家禽を飼育する環境に入り、感染を繰り返すうちに変異して「ニワトリ」に高い病原性を持つようになったのが高病原性鳥インフルエンザウイルスです。
誤解されやすいのですが、高病原性鳥インフルエンザとは、決してヒトに対して病原性が高いという意味ではなく、一般の人が感染する(ヒト)インフルエンザとは異なります。
2. 鳥インフルエンザウイルスの人への感染について
高病原性鳥インフルエンザは、インドネシアやベトナムなど海外で、かなり特殊な環境で感染鳥からヒトに感染した事例が報告されています。高病原性鳥インフルエンザが発生した養鶏場で感染鶏の飼育や死体処理に携わり、羽や大量のフンを吸い込んだり、解体したり、加熱調理不十分な肉を食べたりするなどして大量のウイルスが体内に入り込んだ場合に、ごくまれに感染することが知られています。
ヒトの患者の発生は、2003年から2009年3月2日まで15か国で409人の感染があり、12か国で256人が死亡しています(WHO報告)。しかし、流行地で相当な数の人がその暴露を受けていることから考えると、現時点では、鳥からヒトへ感染する可能性はきわめて低いと言えます。海外では、ヒトからヒトに感染したことが疑われる事例が数件報告されていますが、患者との濃厚な接触がある程度の期間持続した特殊な例であり、現時点では効率的で持続的なヒトからヒトへの感染の証拠はありません。
日本では、この病気にかかったニワトリ等は徹底的に処分されており、通常の生活で感染鳥と接触したり、フンを吸い込んだりすることはまずないことから、鳥インフルエンザに感染する可能性はきわめて低いと考えられます。
3.飼っている鳥、野鳥が死んでいるのを見つけた場合等について
(1) 鳥を飼っている方の留意点
近くで高病原性鳥インフルエンザが発生したからといって、直ちに家庭や学校等で飼育している鳥が感染するということはありません。飼い鳥を野山に放したり、処分したりするようなことはせず、冷静に対応下さいますようお願いいたします。放たれた飼い鳥のほとんどは、生きていくことはできませんし、例え生き残った場合には、生態系に悪影響を及ぼす可能性があります。飼い鳥は、最後まで飼育することが飼い主の責任です。
飼い鳥は、清潔な状態で飼育し、通常通りの衛生に努め、鳥の排せつ物に触れた後には手洗いとうがいをすれば、過度に心配する必要はありません。ウイルスを運ぶ可能性がある野鳥を近づけないようにするため、飼い鳥を室内で飼育したり、防鳥ネットを使用したり、また野鳥への餌付けを慎むよう気を付けてください。
(2) 飼っている鳥が死んでしまった場合
鳥は生き物ですから、人と同じようにいつかは死んでしまいます。そして、その原因も様々ですから、鳥が死んだからといって直ちに高病原性鳥インフルエンザを疑う必要はありません。高病原性鳥インフルエンザにかかったニワトリは、次々に死んでいくということが知られていますので、原因がわからないまま、鳥が次々に連続して死んでしまうということがない限り、高病原性鳥インフルエンザを心配する必要はありません。
原因がわからないまま、鳥が連続して死んでしまったという場合には、死体を素手で触ったり、土に埋めたりせずに、なるべく早く、お近くの獣医師、家畜保健衛生所又は保健所にご相談下さい。
(3) 野鳥が死んでいるのを見つけた場合
野鳥は、厳しい自然界で、様々な原因で死亡します。飼い鳥と違って、事故に遭ったり、エサを取れずに衰弱したり、環境の変化に耐えられずに死んでしまうこともあります。
また、野鳥は、ウイルス以外にも細菌や寄生虫などの病原体を持っていることがあります。野鳥が死んでいる場合には、高病原性鳥インフルエンザウイルスだけでなく、他の病原体についても人に感染することを防止することが重要です。
国内で高病原性鳥インフルエンザが発生しているとき、野鳥が異常死しているのを発見した場合には、市町村に連絡と相談をして下さい。野鳥が死んでいるのを見つけた場合には、病原体による感染を防ぐため、死体を素手で触らないで下さい。
高病原性鳥インフルエンザの発生がない場合、死体を素手で触らずにビニール袋に入れてしっかりと密封して廃棄物として処分することも可能です。このような場合に直ちに相談していただく必要はないと考えられますが、不安な場合には、市町村、獣医師、家畜保健衛生所又は保健所にご連絡下さい。
万一、複数羽の野鳥が異常死している場合には、事故や毒物などによる中毒なども疑われます。この場合には、事件の可能性もありますので、警察、家畜衛生保健所又は保健所にご連絡下さい。
(4) 野鳥が弱っているのを見つけた場合
野鳥が様々な原因で弱っているのを発見されることがあります。窓ガラスや電線に衝突したり、エサを取れなかったり、環境の変化に耐えられなかったりして弱り、飛べなくなることがあります。
国内で高病原性鳥インフルエンザが発生しているとき、弱っている野鳥を見つけた場合には、素手で触らないで市町村に連絡と相談をして下さい。
発生がない場合には、各都道府県の担当部局に連絡して下さい。
4.鶏肉、卵の安全性について
これまで、鶏肉や鶏卵を食べることによって、鳥インフルエンザが人に感染したという報告はありません。
このため、食品衛生の観点からは、鳥インフルエンザ発生農場から出荷された鶏卵や鶏肉を回収する必要はないと考えられますが、家畜衛生の観点から、生きたニワトリ等がウイルスに感染することを防止するために、鶏肉や卵の回収が必要です。
- 鶏卵を「生」で食べることが健康を損なうおそれがあるとの報告はこれまでありませんが、不安な方は、加熱(WHOの食中毒防止のための加熱条件:中心部70℃、瞬間)することをおすすめします。
- 鶏肉は十分加熱して食べて下さい。未加熱又は加熱不十分なままで食べることは、食中毒予防の観点からおすすめできません。
日本野生動物医学会感染症対策委員会

